「今日からここで働くのか」木島比呂也は大手町駅を降りて5分ほどの高層ビルの前で立ち止まった。
そのビルに入居するのは“マイク&ブシ”。
マイク&ブシというのはアメリカ発祥の総合商社で、General Electric社と同じぐらいの歴史持っている世界でも有数の多国籍企業だ。
木島は若い頃から抱えていたボーリング下手というハンデを抱えながらも、何とかこのマイク&ブシにすべりこんだ。
今日がその出社一日目だ。
木島の生まれは食べ物にも困るような寒村で、親は薬を売り歩いて木島を育ててくれた。それでも木島は小さい時から度々狩りに出る必要があった。
そのお陰もあって高校には弓道で特待生推薦をすることができたし、大学にもその特技を生かして入学することができたことを考えれば、寒村様様だったが。
だから木島は成りあがりたかった。その一歩目がマイク&ブシ入社というわけだ。
「おはようございます」 マイク&ブシタワー11階に木島の声が響きわたった。その11階には木島が所属するマイク&ブシタワーの花形部署といわれる
「ネジ部」がある。ネジ部はiPhoneのコネクターの横にある2つの小さなネジを扱っている。そのネジの溝が十分な深さがあるのかチェックするのが
新入社員である木島の仕事のようだ。