2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ラルフィーはランチ時間が過ぎていたものの、それでもテーブルは6〜7割は埋まっていた。 「樫田さん、それよりちょっといいですか?」コロナビールをノドに流しこみながら木島が尋ねた。ライムの酸味がノドに心地よい。 「車の中で樫田さんが話題にした、、…

そんな清川の杞憂も何処吹く風、樫田と木島は工場めぐりを早々に終え、接待と称し、いま樫田がちょっとマニラで気に入っている『ラルフィー』というお店で昼間からワインを3本くらい開けていた。 いい感じですでに酔っ払ってる樫田は、自分のモテ度をブルー…

数日後… 最初の兆候が表れたのは清川だった。筋肉痛のようにだるく微熱が下がらない。マニラも世界のトレンドに漏れずコロナが猛威を振るい出していた。マニラ商工会の会頭を務める清川は本来、外出自粛を呼びかけるべき立場であったが3末に本帰国が決まって…

ウニちゃんを、めがけて一気に飛び込んだその席には、すでに日沈み電設の清川が、しつこいくらいのにゃん語で、話しかけていた。 「 ウニちゃーん、次 ウニちゃんのシッペの番だってー、味噌蟹さんとウニちゃんで、磯 対決しちゃう?』と、ケタケタ笑いなが…

「木島さん、いやヒロでいい? ね! ね!」 どう見ても28歳には見えないネリが目をトロンとさせて、身体をくねくねさせながら木島との距離感をジリジリと詰め始めた。 木島は積極的な女性が嫌いではない。そうあの銀座の子もそうだった。手を引かれて銀座…

また君に会える季節の訪れに 君が綺麗になって戻ってくる 少し大人になって 白い肌眩しくって 今年の君は誰もが ほっとけないよな程綺麗で Ooh, yeah, yeah, yeah, ooh 気持ち良さそうに歌う樫田を横目に見ながら、木島は次の歌を探そうとしている白いビキニ…

宴もたけなわになり、みんな相当出来上がっていたが、樫田が『二次会行くぞー!カラオケ”秘密”。じゃ、”秘密”で15分後な』と言い残して、早々といってしまった。 女子たちは『えー、カラオケって男子がいくとこじゃないの?どうする?』と話していたが、冒…

そう。あの日…樫田と女子達はあの晩のことが脳裏に蘇った。あの晩、樫田はマラテのホテルがプロモーションしていたウイスキー飲み放題に会社のみんなを誘って繰り出していた。そのホテルも女性営業マンに対し下心が有ったかどうか今となっては覚えていない。…

ベルが鳴り始めたと同時に、樫田はさっさとパソコンを閉じた。 『おい、木島!もう帰るガニ〜〜〜〜〜』と、味噌蟹部長のマネをし、木島の帰り支度を急かせた。 樫田は、敏腕ドライバー、マーヴィンに連絡をし、二人は先に、韓国料理ソンスンへ向かった。 店…

ルソン・テクノロジーの前にまず樫田がマニラで所属する事業会社に挨拶に行こうということなので、空港から1時間車に揺られた。見る景色、見る景色全てが木島には新鮮だった。道を歩くフィリピンの女性のほとんどが若く可愛い。大学時代の合コンでは「北九…

塔と二郎に行ってからはや1ヶ月が過ぎた。先日の川田の追及はなんとか躱したものの、木島はなかなか塔に再び話かけるきっかけを得られずにいた。そんなある日のこと。「新人君、ちょっといいかな」いつものように溝計測に勤しむ木島に計測班長である白鳥麗花…

入江塔は、表参道を歩いていた。ベルコモンズにあるカフェでアメリカに留学していたときの友人大灘めぐとランチの約束をしていた。めぐは今外資系の航空会社に勤務している。めぐが先日木島や山谷たちと合コンしてたことは塔は知らなかった。めぐに会うのは…

「キショいわ。肉まんゆーたら醤油やろ。そういや、マニラの中華街で肉まんに甘〜いソース付いてきたけどな。取引先のフィリピン人社長はんはソース付けてはったけどな」「山谷さん、マニラはよく行くんですか?」「月一やな。木島もじきに出張有るで。」木…

塔は、ジロリアンの神髄として、完食出来なかった悔しさと、掴まれた腕の痛みに、腹が立った、でも、どこかに残念さも残った。 『木島さん、見た目タイプなのにぃ』そう思いつつも、その場を後にした。 置き去りにされた木島は、はっと 我に返り、入江の後を…

あれ? この子どこかで見たような・・・ と木島が思っていると 「ランチどこ行くか決まっているんですか?」と塔。 木島はルノアールあたりで軽くサンドウィッチなんかを考えていたのだが、女子とランチなんてどこがいいのかなと迷い答えあぐねていると「私…

「樫田さん、フィリピン駐在になるんですか??」辞令を見た木島は慌てて樫田のデスクに駆け寄った。「おう、元々ずっと希望を出してたんだ。ネジ部でフィリピン駐在といえば、エリートコースだからな。まあ、日頃の仕事振りを見ていれば俺が選ばれるのは時…

「あー、昨日はすっかり山谷さんにひきずられちゃったなー。反省反省。新たに気持ちを引きしめて頑張ろう。でも白鳥さん素敵だったなー。」と、おっとりしてる割にはポジティブな木島は、気を取り直してネジ部に戻った。デスクに戻ってメールをチェックする…

「おう!じゃあみんな喉渇いただろうから手短に。木島、まずは全員の顔と名前をすぐに覚えてチームの一員として元気に頑張って下さい。」そして木島に「後で何かやるんだろ?楽しみにしてます」と締めくくった。木島は前日、山谷から「新人は歓迎会で芸やるの…

部長の味噌蟹さんは、ねじの計測をさせたら、最速レベルで、過去に何度も世界ネジ計測大会で優勝しているらしい。ひとたび計測となると、普段の優しい笑顔からは想像できない眼差しで、深さを判定する、その強い眼差しと、ハンドボールとピラテスで鍛えた、…

「中生もう1杯!」 先輩の樫田のピッチは速い。学生時代の体育会系”1分ジャストでストップウォッチが止められるか部”で鍛えられたそうだ。そのトレーニングは何でも1分丁度で終わらせることが求められるそうで、牛丼食べるのも一分、トイレも一分、もちろん…

どれくらいの数のネジの深さを測っていただろうか。作業に集中する木島に後ろから声が掛かった。「新人君、頑張ってるね」。振り返った木島は相手を見て思わず顔を赤らめた。木島に話しかけたのは白鳥麗花。クールな美貌と抜群のスタイルにも関わらず仕事が…

同じ週の金曜日、例の関西人の山谷が、頭数が一人足らないらしく、歓迎会を兼ねて合コンに行こうと誘ってきた。木島には社会人になって最初の合コンだった。場所は丸の内に最近できた『カヤカヤ』という韓国料理やだった。理由は山谷は韓国料理とマッコリが…

「でかっ」。それが彼女の第一印象だった。その時は彼女が今後の木島の人生を大きく変える事になるとは思いもしなかった。 「しかし、さすが外資だな。新入社員の初日に誰も昼飯に連れて行ってくれないのか…」。木島は午後のネジ測定を思い一瞬、憂鬱な気持…

木島は、広い11階のフロアーをざっと見渡した。朝9時前にもかかわらず、電話の音と、パソコンを叩く音が、心地よいBGMのように感じとれた。 おいっ、木島! 呼ばれた声の方向に顔をやると、先輩の樫田宅が立っていた。お前は、今日、とりあえず最低500個 ネ…

「今日からここで働くのか」木島比呂也は大手町駅を降りて5分ほどの高層ビルの前で立ち止まった。そのビルに入居するのは“マイク&ブシ”。マイク&ブシというのはアメリカ発祥の総合商社で、General Electric社と同じぐらいの歴史持っている世界でも有数の…