「キショいわ。肉まんゆーたら醤油やろ。そういや、マニラの中華街で肉まんに甘〜いソース付いてきたけどな。取引先のフィリピン人社長はんはソース付けてはったけどな」「山谷さん、マニラはよく行くんですか?」「月一やな。木島もじきに出張有るで。」木島の中でフィリピンはAKP(「危ない」、「汚ない」、「パブ」)のイメージしかなかったので特に浮き立つ思いは生じなかった。この頃になると木島はネジ測定のコツをつかみ、1時間に50個のペースで測定出来る様になっていた。時間を忘れて測定しているとお局社員の川田から3時のおやつが配られた。この会社には破ると大変な事になるいくつかのルールが有ったが、その一つがお菓子配りは川田の特権というものだった。取引先からの貰い物,出張者のお土産は川田が一元管理し,川田の裁量で部員に配られる。以前、白鳥が伊豆のお土産を直接配ってしまった事が有り、川田によって説教部屋に監禁された事が有った。木島はふと、「川田さん、うちの社員に入江さんって方います?」と聞いてみた。社内にくまなく情報網を張り巡らせている川田は、、「あぁ、あの子ね。どうして?」川田の目が怪しげに光った。