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あれ? この子どこかで見たような・・・ と木島が思っていると
「ランチどこ行くか決まっているんですか?」と塔。
木島はルノアールあたりで軽くサンドウィッチなんかを考えていたのだが、女子とランチなんてどこがいいのかなと迷い答えあぐねていると「私が決めていいですか? 月曜はここって決めてるんです」
そういう塔の後をついていくとそこは
木島にとっては初めて経験する店だった。
「ヤサイマシマシアブラマシマシカラメニンニク」
塔が念仏のような唱えた。木島が戸惑っていると店員から「お客さんどうされます?」の声。木島は困った。この可愛い子との初対面で恥ずかしいところは見せられない。短時間に頭を振り絞って出した答えは
「ベホイミ」
「承りましたぁ!」と店員の大きな声。ふぅ、と胸をなでおろしていると、「木島君もここよく来るの?」と嬉しそうに塔が聞いてくるので、「うん。ちょっと昼を軽く済ませたい・・・・」
へいおまちい!
塔に提供されたラーメンを見て、さっきの一言が定員の声にかき消されて本当に良かった、と木島は思った。そしてしばらくすると木島がコールした「ベホイミ」が提供された。
「木島君って肉まんが好きなんだね」と塔が屈託なく笑ったが、木島は笑えなかった。「ベホイミ」のオーダーにラーメン屋にもかかわらず肉まんが提供され、その姿がスライムである驚き以上に、テーブルの上には醤油しか提供されていなかったからだ。木島は「肉まんにはソース教」の熱心な信徒。木島が怒りをこらえながら定員にソースをお願いすると
「そんなものないねん。肉まんには醤油やねん。たまり醤油やねん。知らんの?」
(この店員が山谷の兄弟であることを後日知るのであるが)もう木島には我慢できなかった。塔がまだ天地返しの途中だというのに
「入江さん、もう出ようこんな店!」と入江の腕をつかんで、外に出た。
天地返しの途中だった塔は見るからに怒っていた。
運命の二人はこの最悪の第一印象から始まったのである。
た