「でかっ」。それが彼女の第一印象だった。その時は彼女が今後の木島の人生を大きく変える事になるとは思いもしなかった。

 「しかし、さすが外資だな。新入社員の初日に誰も昼飯に連れて行ってくれないのか…」。木島は午後のネジ測定を思い一瞬、憂鬱な気持ちになったが気を取り直して激辛坦々麺を汁まで飲み干した。

 オフィスに戻ると先輩が声をかけてきた。「自分、新入社員なん?俺、山谷正人。東大阪出身でオヤジがネジ工場やってんねん。シェア世界一や」。木島は外資商社にもコネ採用が有るのかと少し驚いた。「しかし、東京はおもろないのー。ノリ悪いわ。大阪はおもろいで。もうすぐ天神祭や。毎年ギャル神輿担いだねーちゃんと祭の後、合コンすんねん。まあ今度、ガールズバーでもいこや」木島は人生初めて関西人というものに遭遇した。