「さて、そろそろ行くか・・・」ワイン4本で露払いを完了させた樫田が言った。今日は昨晩の流れでねりの家でのホームパーティーに招待されていた二人だった。

味噌蟹部長は「今日俺ベッケンバウアー」とギャクにもなっていないことを言いながら昼前に会社を出て行ったのだが、「まさかオンナじゃないでしょうねぇ」という樫田の冗談に「俺、そういうのはマニラ湾に沈めてきたから」、とこれまたギャグにもなっていない返事を返すのだった。

ラルフィーを二人が出ると、いきなり樫田が

「隠れろ!!」

木島が訳が分からず車の陰に隠れると、「あそこを見てみろよ」

ラルフィーからオールドワールドホテルのラウンジを見る事ができるが、そこに味噌蟹部長の姿があった。誰かと談笑している。目を凝らしてみてみると、それはどこかで樫田が目にしたことがある女性。

「・・・・・・・あれは脇江ちゃんだ・・・・・・・・」

脇江はマニラのカジノ「オケラ・マニラ」で働く妙齢の女性だ。

味噌蟹がかって口にしていたソウルメイトは日本にいるはずだが・・・と樫田がつぶやくと木島が「あのポジショニングはまずいですね」

味噌蟹と脇江は向かい合ってグラスを傾けていた。味噌蟹は得意とする接近戦に持ち込もうとするのだが、いかんせん横の動きは得意だが縦の動きとなるとからっきしだ。

縦が弱い味噌蟹が近づくためには隣の椅子からぐるりとまわって脇江の隣のポジショニングを確保するしかないのだが、ぐるりとまわるきっかけをつかめずに2つの隣の席を言ったり来たりするだけなのであった・・・・部下として何とかしたい樫田であったが、そろそろ出発の時間だ。「時間切れだが、行こうか」と、樫田は木島に声をかけるのだった。

1時間のドライブで軽い酔いを覚ました二人は、まずアラバンのナパームに向かった。ナパームはゴルフ場は併設していないものの、プールやレストランがあるカントリークラブだ。

「カンパーイ!!」

プールで寛いでいた友達ゑとネリに合流し、早速パーティーを開始させる4人だった。

「お! ここにボーリング場あるじゃん」樫田が目ざとく見つけると、「やろーやろー 昔すごく流行ったんだよねー」と昭和の第一次ボーリングブームを知るネリは子供のように目を輝かせた。

第一次ブームを知らない樫田であるが、こういった時代ネタを合わせないとネリの琴線に触れること知っていたので「そうそう! すごく流行った!」とネリに合わせるのだった。

パッコーン!! ナイスカン!! 

樫田・友達ゑチームは軽快に得点を重ねた。一方、木島・ネリチームの得点は伸びない。木島が強烈に足を引っ張っているのであった。ボーリングは重い球をただ真っ直ぐ投げるだけの単純なスポーツだ。人がいつのまにか歩けるようになるのと同様に、ボーリングの球は真っ直ぐなげられるものだが、木島のボールは常に両サイドの溝に落ちるのであった。挙句の果てに「痛っつ!」。ボーリングで手首を負傷する始末だった。

もっとちゃんとしてよねー

とネリは木島のだらしがない姿を見て声をかけるのだが、樫田はその瞳にキラリと鋭い光が宿るのを見逃さなかった。どうやら木島の情けないボーリング姿がネリのS性を目覚めさせたようだ。

ボーリングを楽しく終えた4人はナパームを離れて、軽いとは言えない酔いを覚えながら、ネリの家に向かうのであった。